花だより

小唄解説~木村菊太郎著より~

小唄解説~木村菊太郎著より~

雨や大風

雨や大風が吹くのに 傘(からかさ)がさせますかいな雨や大風が吹くのに 傘がさせますかいなはい骨が折れまする 幕末から明治初年にかけて江戸に流行した。「世の中おもしろ節」に風の吹く日にゃ 傘はさせぬ 無理にさしたら骨が折れ 亭主大事にしやさん...
小唄解説~木村菊太郎著より~

桜見よとて

桜見よとて名をつけて まず朝桜夕桜 よい夜桜は間夫の昼じゃとえエエどうなと首尾して逢わしゃんせ 何時(なんどき)じゃ引けすぎじゃ誰哉行燈(たそやあんどん)ちらりほらり 金棒引く 三世坂東三津五郎が文政四年(1821)大阪で作詞作曲して舞台に...
小唄解説~木村菊太郎著より~

時雨して

詞・曲 大槻如電 時雨して 待つ身は辛き蔦紅葉訪のうものは軒の雨しめり勝ちなる床の花 明治中期に作られた江戸小唄である。「蔦紅葉」は、晩秋、山林に自生し、吸盤を持った巻鬚(まきひげ)によって巨樹にはい上がった蔦が、真っ赤に紅葉することをいう...
小唄解説~木村菊太郎著より~

河太郎

鈴木秀雄詞 初代佐藤章子曲 すすきかついだ河太郎南瓜畑をぶらぶらと 酒か団子かいい機嫌用水堀も薄どろを 誘う雨気の小夜更けて月に遠音の村囃子 ​この小唄は鈴木秀雄が帝展に出品された河童の絵を見て作詞したといわれている。河童は伝説の動物で、大...
小唄解説~木村菊太郎著より~

折りよくも

折りよくも 寝ぬ夜すがらや時鳥雨戸にさっと降りかかる誰やら門に訪れの顔に照りそう初蛍 明治中期に作られた江戸小唄である。時鳥(ほととぎす)の初音を聞き漏らさぬ様にと夜通し起きている風習は、平安朝の昔から伝承された日本人の生活であった。時鳥は...
小唄解説~木村菊太郎著より~

葉桜や

葉桜や 月は木の間をちらちらと叩く水鶏(くいな)に誘われてささやく声や 笘(とま)の船 向島の水神で、美妓を侍らせながら初夏の宵を楽しんでいると、水辺の茂みから緋水鶏のカタカタカタと、雨戸を叩くように高く鳴く声がするので、つと障子をあけると...
小唄解説~木村菊太郎著より~

春風が

春風がそよそよと 福は内へとこの宿へ 鬼は外へと梅が香添ゆる 雨か雪か ままよままよ 今夜も明日の晩も流連けに 玉子酒 廓は福は内、鬼は外と、節分の豆撒きをした翌日の立春の日で、梅の香りにも春らしいなまめかしさが溢れている。庭の梅の香の匂っ...
小唄解説~木村菊太郎著より~

初雪

​詞・曲 初代清元菊寿太夫 初雪に 降りこめられて向島 二人が仲に置炬燵 酒(ささ)の機嫌の爪弾きは好いた同志の差向かい 嘘が浮世か浮世が実か まことくらべの胸と胸 明治二十年頃、菊寿太夫が六十八、九才の時の作品と想像される。小唄の舞台であ...
小唄解説~木村菊太郎著より~

秋の野に出て

秋の野に出て 七草みればああさんやれ 露で小褄が濡れかかるサアよしてもくんな鬼薊 ​江戸時代には、初秋の七月の末頃「虫聞き」「七草見物」と称して、秋の夜を郊外に出る風流な人々があった。その人々の褄の先まで、秋の露が濡れかかるのは、何とも言え...
小唄解説~木村菊太郎著より~

たらちねの

たらちねの 許さぬ仲の好いた同士許さんせ罰当たり 猫の皮じゃと思わんせ惚れたに嘘は夏の月 秋という字はないわいな 「たらちね」は垂乳根で親の枕言葉。「罰当たり」は撥あたりで、三味線の胴に貼った猫の皮を指し「秋という字」は飽きるに掛けた語であ...