花だより

時雨して

小唄解説~木村菊太郎著より~
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詞・曲 大槻如電

時雨して 待つ身は辛き蔦紅葉
訪のうものは軒の雨
しめり勝ちなる床の花

明治中期に作られた江戸小唄である。
「蔦紅葉」は、晩秋、山林に自生し、吸盤を持った巻鬚(まきひげ)によって巨樹にはい上がった蔦が、真っ赤に紅葉することをいう。
その性質を利用して洋館の外壁に這わせたりするが、夏は淡緑色の花をつけ、秋に実を結び、それから晩秋、時雨する頃になると掌状に分裂した葉が真っ赤に紅葉するのは、美しいものである。
ここでは、男を巨樹にたとえ、これに這い上がる蔦を女の身にたとえたものである。
小唄の意味は、晩秋から初冬にかけて、時雨する頃、訪ね来ぬ男を待つ妓のわびしい気持ちを唄ったもの。
「床の花」は、置床に活けた花のことで、「しめり勝ちなる」は妓の気持ちの切なさを、床の花によせたものである。
「手活けの花となった嬉しさも束の間、床の番ばかりさせられているやるせなさを唄ったものである」と解釈する。

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