春風が
春風がそよそよと 福は内へとこの宿へ
鬼は外へと梅が香添ゆる 雨か雪か
ままよままよ 今夜も明日の晩も流連けに 玉子酒
廓は福は内、鬼は外と、節分の豆撒きをした翌日の立春の日で、梅の香りにも春らしいなまめかしさが溢れている。庭の梅の香の匂ってくる部屋に、遊女と客が、いま降ってきたのは雨か雪か、「それなら居続けするだけさ」と盃を傾ける風景を唄ったもの。
春風が吹くと福とをかけ、お庭と鬼は外とをかけたあそび唄で、「玉子酒」は酒と鶏卵と砂糖とを加え、かき混ぜて暖めたもので、補精強腎の薬で、遊里の情景描写にはよく使われている。
明治中期の作である。